あたしまた好きな人ができたのって、運動会の写真の前でAさんがつぶやいた。
写真の一人を指差して、口にチャックしてみせた。
「あの人が好き、この人を愛してる」
って、大きな声で叫ぶので注意されているんですって。
「私の好きな人は皆私から離れていくの、おとうちゃんも、あの人も、この人も」
と涙をためる。
「いっぱい愛していれば夢で逢えるでしょ」
っていうと
「それが、おとうちゃんにしか逢えないのよ、夢では」
って泣き笑い顔になる。
「きっと、おとうちゃんはAさんのこともっと愛していたからじゃないの」
っていうと、笑い顔になった。
「いいよね、いっぱい好きな人できても」
ってきくから
「うん、いいよ、好きな人がいっぱいいると幸せになれる。
おとうちゃんのこともっと愛しちゃうともっと幸せになれる」
って、耳元でささやいてきた。
Aさんがニコニコ顔になった。
病棟を歩いていてこういう会話ができるのが幸せ。
※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。
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