Aさんは毎日毎日同じ時間に同じ所を散歩していた。
道で倒れたとき、おなかの中はすでにガン細胞でいっぱいだった。
手術をするために別の病院に行った。
病室をたずね、困っていることは何かと聞いたら、
何にも食べさせてもらえないのが辛いと言った。
手術を止めて帰ってきた。
何ヶ月かすると、もう歩けなくなった。
血を吐きながら、毎日毎日車椅子で売店に行ってパンを買う。
少しずつ食べようねと言うと、
ニコッとしてうれしそうにパンをほおばる。
そして血とともに吐き、
こんこんと黄色い身体を横たえて寝る。
あと何回一緒にパンを買いにいけるだろう。
最後まで一緒に買いに行くからね。
一日に一回輝きを見せてくれるAさんの横にいられるのは幸せ。
※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。
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