「あのさあ、昔、藪医者がいてさ、昔のことだよ。」
「昔藪医者のことで困ったんだ」
「うん、昔」
「藪医者はいいほうよ。藪の向こうにかろうじて先が見えるんだから。土手医者って知ってる?」
「しらない」
「あのね、土手医者は先が見えないの」
「ハハ、そうか、藪医者はいいほうなのか。じゃあ、竹の子医者って知ってる?」
「竹の子医者?知らない」
「竹の子医者ははどこにでも出てくる元気のいい医者のことだよ。そういう医者いないなあ。」
「そうねえ、でも竹の子患者は知ってるわよ」
「えっ、それってもしかして僕?」
「あたし、竹の子医者がいなくても、竹の子患者がいればいいわ!」
「そう、僕、竹の子患者!」
夕方のロビーのちょっとした会話で、Aさんの気持ちは、ほんのちょっとふわっとします。
職員の気持ちもふわっとします。
※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。
0コメント