Aさんは草や花とお話ができます。
約束していたので、お散歩に行きました。
病院の周りの田んぼ道には、野の花が咲いています。
しゃがんで、花びらを一枚一枚ちぎり、
「痛いよ、痛いよ」
「そうね、痛いよね」
ってお話をします。
ちいさな葉っぱとおおきな葉っぱは兄弟だそうです。
「おねえさんもがんばってね、僕たちもがんばってるから」
お散歩をしながら葉っぱやお花とたくさんお話をして帰ってきました。
何にも言わずにただついていっただけ。
Aさんはお花屋さんだったんですよ。
Bさんは歯科のお姉さんのところにいって、
「かのうさんのところへつれていって」
って、頼んだのだそうです。
1人で、コンコンとドアは叩けないからって。
「会いたかったんだよ、あんたに」
口をぺちゃぺちゃしながら、くしゃくしゃの手でられそうに私の手を握ります。
「昨日音楽療法で歌ったんだよ」
それは、『函館の女』でした。
ふたりで廊下の隅の椅子に座って手をつないで歌いました。
思い出すたび会いたくて、とーても我慢ができなかったよー」
Cさんはみんなと焼肉を食べにいきました。
スタッフと患者さんとで。
とってもうれしかったって。
もうこれ以上の幸せはないからもう死んでもいいって。
僕がみんなの不幸を持っていくから、
僕はもう充分幸せだったからって、
ベランダの金網によじのぼったんです。
みんなで、ここで暮らそう。
※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。
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