【2001年7月19日】ふがいなさと、いとおしさ

聖書を読んで、恋文を書くAさん。
以前はとても元気に働いていたんですって。
だから職員はつい言ってしまうんです。
こんなAさんじゃあなかったって。

Aさんが二年前に書いていた文にとても感動した看護助手はその言葉を日記に書きとめました。
今日私に二年前の日記を探して紙切れに書いてきてくれました。
「努力こそが自分の大学」
食堂でAさんの受持ち看護婦に会ったのでその紙切れを見せました。
感嘆のため息をして、「これがAさんなんですね」って。
そう、Aさんは今の自分が不甲斐ない。
不甲斐ないけど、昔のAさんはと言われても、
そんなことは自分が一番知っているから、もっと不甲斐なかったのよ。

「わたしAさんはもっともっとできることがあるはずだって、
何とかしたいってあせっていたんです。
困っていたのは私で、
Aさんは私にそんなにがんばらなくてもいいよって
言ってくれていたのかもしれない。」

そう、患者さんはいつもそうやって看護婦に教えてくれる。
Aさんは分厚い眼鏡の奥で不甲斐ない自分と、
いとおしい看護婦さんを見ているよ、きっと。 

※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。

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