【2001年6月29日】ほんの一瞬の交わりの時

Aさんは不思議な人です。
何を言っているのか何をしているのかわからない行動をしますが、
一瞬のうちに全く変身してしっかりと自分の意見をいいます。
ちり紙を丸めて散らかしているようにもえるんですけど並べているようにも見えます。
ごみ箱に入れたら何すんだいという感じて全部出してまた並べました。
私はすいませんでしたといって出てきました。
今日はそんなAさんを事例検討のケースとして話をしました。
それはAさんのことで何が気がかりかということを話したのですが、
実にいろんな意見がありました。
素敵だなと思ったのは、Aさんのエピソードを
Aさんとして看護助手の人達が書いていて、
その様子が手に取るようにわかる事でした。
その日記を始めてから、Aさんが「正気」になる時間が増えたのです。
看護助手のBさんは一緒にちり紙を並べました。
すいすいとお部屋を飛んでいるときは一緒にすいすいしました。
みんながAさんにたいして思っていることを、Aさんが形を変えて行っているようです。
Aさんには、みんなを動かす力があったんです。
あっちの世界、こっちの世界、いくつかの世界をワープしているAさん。
Aさんの生きる世界は、あの時間とこの時間とが錯綜しています。
一瞬交わる事の出来る人と、全く違った時間を過ごす人がいるようです。
Aさんは誰とホンノすこし時を共有できるか知っているようです。

※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。

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