【2001年3月16日】微笑みかえし

痴呆病棟の「家族のつどい通信」(微笑みかえし)は、月1回発行、今回で114号。

若くしてアルツハイマー氏病となった奥様の面会に通うAさんの原稿(一部)を、快諾いただいたのでここに載せます。

~ 一喜一憂することなかれ ~

3年前、突如行方不明になった。
気が動転するなか無情に時間は経つばかりであったが、幸いにも3日目に警察署に保護された。
前歴も2,3回あるが、当時は自分で警察なり区役所に駆込み、ことなきを得てる。
今回の徘徊はかなりのショックだった。
・・・日ごとに増す深刻さは、共倒れを伴う最も危惧する状態であった。
進展極まれりとはこのことかと。
窮すれば通じる。
若干の曲折があったものの当院へたどり着き、幸いにも受け入れられた。
入院してしばらくは、病状が気になって良くかよっていたある日のこと、先生から
「一喜一憂することはないから」
「まあ、やるだけやってみましょう」
と言われ、お願いしますの一言につきた。
一喜一憂、日常最も制御しがたい存在のひとつだが、アクセントとなることもある。
現役の商社勤めの頃は、利害や損失にこの四文字が始終つきまとい、支配されていたのかと思うと、なんとなく小さな人間にみえてしまう。
これからは、座右に「泰然自若」を銘として歩んでいきたいと思う。

「若干の曲折」という短い言葉で、深い苦渋の思いを語る。
そのことに私は頭を下げたい。

※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。

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