私の部屋の前の廊下は画廊になった。
ふんわり、ほのぼのしたはり絵を見にたくさんの人が訪れる。
「いいね」
「何度見てもいいね」
「またこようね」
看護婦と手をつないでAさんが見にきたようなので、にわか学芸員の私は絵の説明をしたくてドアを明けた。
「これはニ長調をイメージしたものです」
「これはブータンの人々、これはネパールの人々の生活です」
「これは、和紙ではなくて布です」
いつもニコニコしているAさんはウンウンとうなずいてくれる。
あっそうだ、もう一枚見てほしいの、中に入ってみて!
私の部屋の中には新年会でおでんをおいしそうに食べているAさんの写真が張ってある。
他にも、いい笑顔の患者さんと、いい笑顔の職員の写真が何枚か張ってある。
あんまりいい笑顔だったんで壁に張ってしまったんだけどいいかしらと聞くと、コックリとうなずいてくれた。
※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。
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