痴呆病棟では、『街のイルミネーションを見に行こう』というレクリエーションを企画し、
何人かずつを夕方のドライブに連れだった。
スタッフの思惑の街のイルミネーションもよかったけど、それ以上に喜んでくれた
喧嘩をして気持ちの晴れなかったAさん
「やっぱり外に出ると気が晴れるわ」
20年近く住んでいた自宅の付近で目を凝らして窓の外を見ているBさん
「懐かしくて涙が出ちゃう」
車中では会話の少なかったCさん
「連れていってくれるならどこでもうれしいわ」
「珊瑚のようね」とDさん。
「いっぱい桜が咲いているね」とEさん。
「夜のお出かけなんて何年振りかしら」と多弁なFさん。
「夜の街なんて久しぶり」とマンションの灯火に感嘆するGさん。
「家の明かりはいいもんだね」とHさん。
「月もきれいな三日月ですね」とJさん。
Jさんは一番喜んでくれた。
「夜の街なんて長いこと出たことなかった。若い人は出かけても年よりはおいて行かれるからね。夜の街は静かできれいだね。木にまで電気つけて!でもきれいだねえ」
病院の門を出て通りを走ったら、
「黄昏時はいいですね」って。
ほんと、黄昏時はいいですね。
※本記事は、20年以上前(2000年11月~2004年4月)千葉県内の某精神科専門病院に看護部長として勤めていた頃、ナースサポートKKに掲載していたブログ『あっけらかん病院看護日誌』のアーカイブです。
0コメント